-

HOME > 相談員コラムリレー > 『再びCO中毒が・・・』  ( 9月: 大森良雄 相談員 ) 

『再びCO中毒が・・・』  ( 9月: 大森良雄 相談員 ) 

〔アイドルグループ〕
「6月15日午前2時5分頃、宇都宮市大谷町の採石場跡の空洞内で、映画の撮影中だった女性アイドルグループ「でんぱ組.inc」のメンバー5人と撮影スタッフ5人の計10人が、気分が悪いと訴えて病院に搬送された。10人は18~43歳の男女で、一酸化炭素(CO)中毒とみられる。いずれも軽症。」・・・との報道が15日のインターネットや16日の新聞各紙に掲載されました。
 警察発表によると、現場は、建材などに使われる「大谷石」の採石場跡で、14日午前9時頃から撮影を始め、照明用の電源としてガソリンを燃料とする発電機3台を動かしていた。警察は、発電機の排ガスによるCO中毒とみて調べている。当時、空洞内にはスタッフ48人がいた。(読売新聞)・・・との概要です。
 労働安全衛生規則第578条では、「事業者は、坑、井筒、潜函、タンク又は船倉の内部その他の場所で、自然換気が不十分なところにおいては、内燃機関を有する機械を使用してはならない。ただし、当該内燃機関の排気ガスによる健康障害を防止するため当該場所を換気するときは、この限りではない。」と定めています
〔新木ノ俣用水トンネル〕
 CO中毒といえば、栃木県内では過去に大きな労災重大事故が発生しています。今から48年前の昭和41年7月、全国安全週間が終わった翌日に黒磯市(現・那須塩原市)の百村地区で発生したCO中毒事故があります。私も当時、行政に入って3年目ということで当時の栃木労働基準局の安全衛生課に勤務しており、直接その事故現場にはいけませんでしたが主に電話連絡等を担当していました。
 事故は、前月の台風による用水トンネル内壁の崩落等により水の確保ができなくなったことから改修工事を行なうこととなったもので、工事業者ら59人が長さ700m程、高さ2~1.5m程のトンネル内部に入り、入口から280m程の崩落個所等の改修にあたったものです。
 この際、トンネル内部の照明確保のために、内部に発電機(ガソリンエンジン)を持ち込み電源としたことから25名が死亡、17名が入院するという惨事となったものです。なお、25名のほとんどが地区住民の「義務人夫(受益者負担のための勤労奉仕)」で、労働者とはならず「労働災害」とならないことから「労災保険」を支給すべきかどうかが国会などでも議論されました。
 また、CO中毒症状の治療のための機器として「鉄の肺」の話題もありました。これは、昭和38年11月に九州・三井鉱山三池鉱業所で発生した死亡者458人の「炭じん爆発」によるCO中毒者839人の治療で使用された機器を、自衛隊が搬送するなどの話もありました。
  栃木県は災害事故の少ない県といわれていますが、それでもこのような多くの命を奪った事故があったことを知っておいていただきたいと思います。
〔重大災害〕
  一度の事故で3人以上が死傷する労働災害を監督署では「重大災害」として直接現地調査を行う対象としています。近年、この重大災害が増加しなかなか減少していない状況にあります。全国的には化学工場等の爆発災害や火災での重大災害が目立つといいます。安全衛生管理における「リスクアセスメント」の取組みがまだまだ不十分ということではないかと考えられています。
 これほどの重大事故でなくても、町のパン屋さんでのCO事故やスーパーマーケットのバックヤードでのCO事故で救急搬送された事例もあります。閉め切った環境は冬場だけではありません。現在の夏の暑い日のエアコン運転時の部屋など、締切った環境は至る所にあります。また、豪雨による自動車のマフラー水没によるCO中毒も報道されています。
  現代は「至る所に事故の要因がある」と考えておくべきなのではないでしょうか。

ページの先頭へ戻る