4.【コラムリレー】
「ストレスチェック制度の施行にあたって」 相談員:中野 隆史 (メンタルヘルス担当)
ストレスチェック制度の施行が間近に迫り、各事業場はその対応に追われています。
ストレスチェック制度の目的は、うつ病などのメンタルヘルス不調者を早期に発見する2次予防ではなく、高ストレス者を発見して、医師の面接指導とこれに基づく事後措置などによってメンタルヘルス不調を予防する1次予防にあります。
この制度では個々の労働者のストレ状態のチェックだけでなく、集団ごとの集計・分析によって、職場におけるストレス要因を把握し、職場のストレス状況の改善を図ることで労働者のメンタルヘルス不調を予防することが重要です。
ストレスチェックによって職場のストレス状況を分析することはできても、これを職場環境の改善に結びつけるには今後のノウハウの蓄積が必要です。
ある調査によると事業場でのメンタルヘルス不調を抱えた労働者の把握の方法としては、上司または同僚の情報が最も多く(63.7%)、定期健診時の問診票(26.2%)、医師による面接指導(7.1%)、相談窓口の設置(18.2%)、休業者に対する調査(16.6%)、医療機関での相談・受診(11.5%)などがありました。
この制度ができる前から労働者のストレス状況を調査してきた事業場は全体の25.8%ありました(平成24年度)。すでにストレスチェックを定期健診時などに毎年行ってきた先進的な事業場では、今回のストレスチェック制度を職場の健康管理体制の中で有効に活用できそうです。
一方、労働者のメンタルヘルスの保持・増進に十分に取り組んでこなかった事業場では、ストレスチェック制度の実施をきっかけとして労働者のメンタルヘルスの向上に取り組むことが求められます。
この制度が有効に機能するためには、労働者がストレスチェックの質問に正直に答えることが前提です。ストレス状態を高く見せたい、あるいは高く見せたくないという意図をもって労働者が虚偽の回答をすれば、ストレスチェック制度は機能せず、混乱を招きます。
今回、マニュアルで推奨されている調査票(職業性ストレス簡易調査票)では被検者が正直に答えたどうかをチェックする項目がありません。自己評価式(自記式)の心理検査の中には「虚偽スケール」といって、質問に正直に答えているかどうかをチェックする項目を含んだものもあります。今後、こうした点についても検討が必要と思われます。
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《編集後記》
紅葉も真っ盛りの時期です。また、ハロウィンも終わり、クリスマスの報道もちらほら聞こえてきました。
私は、休日を利用して、冬物の衣類の準備をしましたが、これまで何年も衣類の処分や整理をしてこなかったため、衣類まみれとなり、疲労困憊(さらに、ストレスの溜まった)の一日になってしまいました。今後は、自分の余生等を考えて、衣類だけでなく、使わない日用品等の処分や整理をしていかなければならないと思いました。
毎月、この話題となっていますが、「産業保健関係情報」や「中野相談員のコラム」にも書かれていますように、ストレスチェック制度の施行が間近に迫っています。
当支援センターでは、このストレスチェック制度に関する研修・セミナーを開催していますが、研修終了後には、
・実施者と実施事務従事者の役割分担はどのようにしたら良いのでしょうか。
・人事を決定する権限まではありませんが、部下職員の人事評価を行う職制の者は、実施事務従事者になれるでしょうか。
・実施事務従事者には守秘義務が課せられましたが、各労働者の生データーを取り扱うことから、実施事務従事者に選任された者が、他の労働者とこれまでと同様の人間関係を保っていけるのか心配です。
・面接指導の申し出を行った労働者のストレスチェックの結果の情報は、どの程度の内容(詳細な回答内容等)まで事業者に提供されるのでしょうか。
といったかなり実務的な内容の質問や疑義が寄せられています。
一方、まだまだ周知が不足しているためか、「まだ決まっていないことが多すぎて、実施に向けた対応や準備が行えない。」とのご意見も寄せられます。
今後、11月中には、面接指導を行う医師のための「面接指導の実施マニュアル」が示されますが、ストレスチェック制度に係る枠組みは、通達や指針等で既に全てが示されています。ですから、事業者においては、法律、通達、指針に基づいて、衛生委員会等での調査審議を行い、実施に向けた準備を進めていただくことになります。
このストレスチェックの実施に向けた対応等については、当支援センターでは、「メンタルヘルス対策促進員」が「個別訪問支援」や「管理監督者向け教育」で支援や助言等をさせていただいていますので、是非、ご利用ください。
今後とも、皆様のご意見、ご要望に沿ったご支援をしていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
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