毎年施行されている定期健康診断の経時的な観察から、勤労者の健康状態が把握され、適切な事後措置が実施されているか、健康づくりに対する考え方とその実践のための環境づくり・支援状況はどうか、また、これらの更なる推進を図るためには如何にすべきかなど、県下の事業所の健康管理活動の状況と健康支援の実態を調査・分析し、これを基に、現状の問題点と今後の健康確保の推進方策を検討する。
「健康管理活動の動向に関するアンケート」を作成し、従業員50人以上の県下の事業場2,140社を調査対象に、平成8年10月から質問票を発送し、同月31日までにその回答を求め、業種や従業員規模間の検定にはX2-testを用いて集計解析を行った。
調査対象事業場から得られた有効回答は836事業場、39.1%の回収率で、その業種割合をみると、製造業が47.2%と約半数を占め、次でサービス業が18.5%、運輸業・通信業が8.4%を占めていた。 さらに、これらを従業員規模別にみると、99人以下の事業場からの回答が48.0%と最も多く、次で100〜299人の事業場が37.6%で、この両者で約80%を占めていた。
産業保健活動にあたり、現在、その担当者がどんな事項に戸惑っているかをみると、26.8%の担当者が職場での健康づくり「THPの導入方策」をあげていた。 次で「健診結果の整理・分析・活用」が22.8%で、「健診の実施と事後措置」も17.7%あげられ、健康診断に関しては事前準備から事後措置、そして評価から活用まで広範にわたる各層に多くの担当者の戸惑いがみられた。 また「作業環境・条件の安全・衛生上の改善」が14.4%、「作業環境・条件の調査測定」が7.4%あげられたが、両者を併せると21.8%の担当者が作業環境の管理・測定に関する事項に戸惑いをみせていた。 さらに、「関係法令の解釈」については、9.0%の担当者が戸惑いをみせていた。 これら担当者の職務遂行上の戸惑いは、業種別、事業場規模別にみても大差なく、ほぼ同様・共通の傾向がみられた(表1)。
また、労働衛生対策を実施する上での問題点をみると、「産業保健担当者の研修が不十分」が20.1%と最も多く、次で「経営上、十分な産業保健活動を行う余裕がない」が18.5%で、「産業医が産業保健にさく時間が十分でない」が15.4%みられた(表2)。
担当者の戸惑い事項(重複回答可) | 度数 | % |
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THPの導入方策 | 224 | 26.8 |
健診データの整理・分析とその活用 | 191 | 22.8 |
健康診断の実施とその事後措置 | 148 | 17.7 |
作業環境・条件の安全・衛生上の改善 | 120 | 14.4 |
疾病管理対象者の職場適応の判断 | 107 | 12.8 |
関係法令の解釈 | 75 | 9.0 |
作業環境・条件の調査測定 | 62 | 7.4 |
日誌など職務上の記録の整備 | 59 | 7.1 |
負傷および疾病統計の作成 | 25 | 3.0 |
その他 | 53 | 6.3 |
問題点(重複回答可) | 度数 | % |
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産業保健担当者の研修が不十分 | 168 | 20.1 |
経営上、十分な産業保健活動を行う余裕がない | 155 | 18.5 |
産業医が産業保健活動にさく時間が十分でない | 129 | 15.4 |
産業医、衛生管理者等の人材が十分得られない | 94 | 11.2 |
改正法令、化学物質情報が十分得られない | 82 | 9.8 |
事業主の産業保健活動への理解が不足している | 62 | 7.4 |
産業医から適切な助言が得られない | 59 | 7.1 |
その他 | 18 | 2.2 |
特になし | 271 | 32.4 |
健康づくりに取り組んでいる事業場は67.9%で、他業種に比し製造業の73.5%や運輸業の75.8%の取り組みに高い傾向(p<0.01〜0.05)がみられた。これらを事業場規模別にみると、規模が大きくなるにつれて、99人以下の63.8%から1,000人以上の95.2%と、健康づくりの取り組み比率に増大傾向 (p<0.01) がみられた。 また、THP活動を推進している事業場は24.8%みられ、従業員規模の大きい1,000人以上の事業場の実施率は71.4%と良好な比率を示したが、99人以下規模の実施率は「適当な指導者がいない」56.0%、「設備・場所がない」36.6%、「従業員の関心がない」32.3%等の理由から 全体では20.7%にとどまっていた。THP導入のきっかけは「経営者の理解・すすめ」が最多で38.6%を占め、次で「労働基準局のすすめ」が28.5%、「産業医のすすめ」が25.6%、「従業員からの要望」が18.4%を占めていた(表3)。