栃木産業保健総合支援センターは勤労者の健康確保を図るため、産業保健に携わる皆様のお役に立てるよう努力しております。
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50人未満の事業所における有所見頻度の実態について


1999/01/01 09:00

調査研究体制
松本 兼文: 栃木産業保健推進センター所長
宇佐見隆廣: 栃木産業保健推進センター相談員
森  昇二: 栃木産業保健推進センター相談員
木村 一元: 獨協医科大学情報センター部長
山根 則幸: 栃木県保健衛生事業団事業管理部長
小林 一美: 栃木産業保健センター副所長
神永  成: 栃木県保健衛生事業団
木村 高幸: 栃木県保健衛生事業団

調査研究結果の概要

1.はじめに

産業界の担い手となっている、50人未満の小さな事業所は大きな事業所に比べ、労働衛生の管理体制なとが十分でなく、定期健康診断の施行も、小さな事業所ほど、その実施率が低率となることが、指摘されております。

私共は健康診断の届出義務のない、小さな事業所に働く人達の、健康や傷病状況に、何か特徴はないか、従業員規模別に比較検討を行いましたので、その成績を報告させていただきます。

2.対象と方法

対象と方法についてですが、栃木県の保健衛生事業団が、継続的に定期健診を実施している、職域団体1,237事業所の、平成10年度の受信者、61,781名を対象者といたしました。 それぞれの事業所の業績は、国勢調査用の産業分類に準拠して、製造業や建設業など17に分類いたしました。 従業員規模は49人以下、50人以上、100人以上、300人以上、1,000人以上の5区分に大別いたしました。 また、問診から生活・労働強度や飲酒・喫煙など7要因を、検査成績から、血圧値や生化学検査値など、20項目を採取いたしました。

解析は規模別に行いましたが、規模間にみられる年齢構成の差異をくため、マンテル・ベッツェル法を用いて補正を行ない、それぞれの所見頻度を、男女ごとに算出いたしました。 また、これら補正した、年齢調整頻度を用いて、各所見のオッズ比を求め規模間におけるLinear trendをマンテル・エクステンション法を用いて検討いたしました。

3.結果と考察

  1. 対象事業所の規模と業種

    結果についてですが、対象事業所の規模と、その業種の割合をみますと49人規模が約79%と最も多く、次で、50人規模が9%、100人規模が8%、300人規模が3%、1,000人規模が最も少なく約1%で、当然のことながら、従業員の規模が小さくなるほど、事業所の数が多くなるという傾向がみられております。 また、業種は製造業が約26%と最も多く、次で卸売・小売業が17%、建設業が14%を領し、これら3業種で全体の過半数以上を占めております。

  2. 生活・労働強度と飲酒・喫煙の状況

    次に、これら就労者の、日常の生活習慣に関わる状況についてですが、生活・労働強度の「やや重い重い」の出現率は男子で約13%、女子で約6%で大量飲酒の「毎日飲む・毎日3合以上」は、男子で約34%、女子で約4%の頻度が得られ、大量喫煙のブリンクマン指数の400以上は、男子で約44%、女子で約3%の出現率がみられております。

    これら3者の出現率は、男女とも、1,000人規模に比べ49人規模に、その出現率が高く、それぞれのオッズ比も、規模が小さくなるにつれ増大するという、linearな傾向が認められました。

  3. 既往症の状況

    次に、既往歴の状況ですが、採取した既往疾患は高血圧など、生活習慣病の他に、腎臓病や結核など12疾患です。 この12疾患のいずれかを既往にもつ就労者は男子で約16%、女子で約18%みられましたが、1,000人規模に比べ49人規模就労者には低頻度の傾向がみられております。

    また、この傾向を疾患別にみますと、狭心症は男子に、貧血は女子に、高脂血症は男女ともに、49人規模就労者に低頻度の傾向がみられました。

  4. 各検査所見の状況

    次に、各検査所見の状況についてですが、それぞれのcut off値と、その出現率を抄録の表1に掲げてございますので、ご参照ください。

    大規模就労者に比べ、小規模就労者に高頻度にみられた所見は、収縮期性高血圧、肝機能低下、耐糖能低下などで、男子は、これに、高脂血症と高尿酸傾向が、女子には肥満傾向が加わります。

    また、大規模就労者に比べ、低頻度の傾向がみられた所見は、男子の拡張期性高血圧と女子の貧血(RBC、Hb、Ht)のみでありました。

    さらに、抄録にも示しましたが、これら多くの所見のオッズ比には、規模間で linearな傾向がみられております。


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