平成2年4月に日本医師会の認定産業医制度が発足し、平成8年には労働安全衛生法が改正され、産業医の要件として日本医師会認定産業医制度による産業医学基礎研修修了が位置づけられた。このようにして、極めて多くの医師の参加を得て、地域産業保健活動が年々活発になってきている。
そこで、認定産業医制度発足後12年を経た現時点で、栃木県内の認定産業医がどのような産業保健活動を展開しているかの実態を把握し、今後、どのような産業保健活動を展開すべきかを再検討するために「認定産業医の産業保健活動に関する調査研究」を行った。
〜尚、結果の図表に関しては下段のPDFファイルを参照して下さい〜
栃木県内で「日本医師会認定産業医」の資格を取得している産業医922名にアンケート用紙を送付した。最終回収数は307件(33%)であった。
図1-2に示したように、男性が87%、女性が13%と圧倒的に男性医師が多かった。もともと県内医師の「男女比は男性が高い」ためと考えられる。産業医には事業場の巡視など危険を伴う仕事もあり、また、経済的にも社会的活動をすることが可能になったためか、図1-1にみるように、40〜50歳台の元気な男性医師が産業医活動に従事する割合が高くなっている。
内科医が全体の62%で圧倒的に多く、次いで外科17%、循環器科12%、小児科12%、胃腸科12%であった。
「良く知っている」が56%、「聞いたことがある」が35%で、「知らない」は9%に止まっていた。今回の調査に返事をしなかった医師は当推進センターを知らないとしてもかなり高い認知度と考えて良いように思われる。栃木産業保健推進センター、地域産業保健センターが平成5年に開所されたので既に10年の活動実績もあり、高めの認知度となったのではないか。また、県内8地域医師会、2医科大学で「日本医師会認定産業医」の講習を頻回に行っているため、認知度が高くなった可能性もある。
栃木産業保健推進センターの認知度が高いにもかかわらず、「産業保健推進センターを利用したことがある」が28%と利用度が著しく低かった。認定産業医の資格は持っているものの「事業場からの産業医活動依頼が未だにない認定産業医」が少なくない(図14-1)ために、「産業保健活動をしてゆく上で生じた疑問点を栃木産業保健推進センターを利用して解決する」までの活動レベルに達していないのではないか、と考えられる。今後、事業場に対して頻回の「産業医を利用するよう」PR活動をおこなう必要があると考えている。
医師会に加入していない医師が18%もいた。
会員数の多い宇都宮が最も多く、次いで、会員数は程々であっても以前より産業医活動が盛んであった上都賀、下都賀医師会に所属する認定産業医が多かった。
良く知っているが58%、聞いたことがあるが31%で、認知度はかなり高かった。しかし、返事を下さった医師は産業保健に関心の高いためかとも思われるので、返事を下さらなかった医師では認知度はかなり低いのではないか。
「登録している」がほぼ半数、「これから登録したい」が25%と、資格を取得した多くの医師が地域産業保健センターに登録しており、何らかの形で、産業保健活動をしたいという熱意が感じられた。
「窓口相談事業」が82%と圧倒的に多く、「個別訪問による産業保健指導および相談」は52%であった。
登録機関であるが61%、これから登録医療機関として登録したいが17%、登録医療機関にする気はないが22%で、何らかの形で地域産業保健活動に参加したいとする医療機関が極めて多かった。
このように熱意のある医師の活動の場の拡大を図ることは、産業保健推進センターや地域産業保健センターの緊急の課題であると考えられた。
良く知っているが37%、少し知っているが35%で、認知度はかなり高いように思われるが、アンケートに答えてくれなかった医師の小規模事業場産業保健支援促進事業の認知度は低いと考えられるので、今後とも、医師に対しても小規模事業場産業保健支援促進事業のPRも行わねばなるまいと考えている。
嘱託産業医をしている医師は62%にも及んでいたが、産業医をしていない医師も31%もいた。
70%の医師が嘱託産業医をしたいといっている。小規模事業場の産業医共同選任制度もあり、推進センターとしては、今後、これら熱心な医師に嘱託産業医として活動する場を開発する努力もしなければならないかについて検討しなければなるまい。
「いいえ」が97%(図14-1)にも及んでおり「差し当たり資格でも取っておこうか」という医師が多いということであろうか。しかし、折角、小規模事業場を対象とした「産業医共同選任制度」があるのだから、地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センターは「産業医共同選任制度」を活用するよう積極的に事業場ならびに嘱託産業医でもしたい熱心な医師にも働きかけてゆかねばなるまい。
「登録している」がほぼ半数、「これから登録したい」が25%と、資格を取得した多くの医師が地域産業保健センターに登録しており、何らかの形で、産業保健活動をしたいという熱意が感じられた。
99%までが勤務予定がないとのことで、産業医を雇用しなければならない事業場に、充分、これら事業場と話し合った上で、産業医を紹介する必要もあるのではないか。
現時点で、専属産業医をしている医師の産業医経験年数は、5年未満30%、5〜9年21%、10〜19年31%、20年以上19%と、経験年数はバラバラであった。
「医師会を通じて」産業医になったが41%、「近所の事業場から依頼された」が36%で多かった。また、「たまたま会社関係者のかかりつけ医師だった」、「病院を通じて」がそれぞれ14%であった。
「登録している」がほぼ半数、「これから登録したい」が25%と、資格を取得した多くの医師が地域産業保健センターに登録しており、何らかの形で、産業保健活動をしたいという熱意が感じられた。
医師会が定めた様式による契約書で産業医契約を結んだ医師が58%、「それ以外の文書契約」は28%であったがこれは契約先の会社の定めた書類で契約をしたのであろうか。
1カ所が50%、2カ所が25%であったが、かなり多数の事業場の産業医を兼務している医師もいた。「名義貸し」なのか「臨床をやめて産業保健活動に専念」しているのかは分らない。
担当している事業場は「労働者数が50〜199名までの事業場」が最も多かったが、専属産業医を必要とする1000名以上の事業場も18カ所あった。また、有害作業があるために「常勤の産業医を雇用しなければならない事業場」もあると考えられるので、法規で定める常勤産業医の雇用を必要とする事業場にもかかわらず常勤産業医のいない事業場はかなりの数になると推測される。
専属産業医は14名、嘱託産業医は121名(90%)であった。