加重労働に関する通達は知っている栃木県内産業医は54%で、知らない産業医が46%もいた。この一年間、栃木産業保健推進センター、郡市医師会などでの産業医学講習会で「加重労働」の講演を積極的に行なったはずだが、今回の調査では、産業医の80%近くが時間外労働時間を超えた労働者と面接、保健指導、健康診断を実施することに関して充分な知識がないとのこと。地域医師会や地域産業保健センターレベルでの講習回数が充分でなかったのであろうか、それとも、話は聞いたが、記憶に残り現場ですぐに応用できる実務的な講習ではなかったのか。今後、「加重労働」に関する県内講習会の質と量を上げてゆかねばなるまい。
情報提供をしたは僅かに24%の事業場であった。今後、かなり積極的に広報努力をすることが必要と考えられたが、情報提供を効率的に労働者にも届くようにするためには、かなりの工夫が必要であるように思えた。
欧米、アジアの労働者は所定の時間となると仕事をやり残してもみんなが蟻の子を散らすようにアッという間に帰宅してしまう。ところが、日本の労働者は責任感もあり、また、働くことが好きなのか、所定時間を越えて働いている労働者が少なくない。なかには「サービス残業」という労働の対価を受け取らずに長時間労働をしている労働者も少なからずいる不思議な国でもある。
日本は「長時間労働をしているために心疾患で急死する労働者が絶えない」国である。このため、長時間労働による労働者の突然死を予防する制度が発足した。「産業医による労働者の面接、保健指導、健康診断実施」の制度であるが、今回の調査では、時間外労働をしている労働者の5人に4人までが「保健指導や健康診断」受けていないという。こうした労働者本人と家族の幸せを守るためには、「保健指導や健康診断を実施しなかった事業場」には大額の罰金を徴収することも必要となってきているのではないかと思案された。
半数近くの産業医が事業者から「従業員のメンタルヘルスの相談」を受ける時代となった。ところが、本格的に「産業精神保健の相談」を受け持てる精神科医師が極めて少ないというのが日本の実態である。
というのが日本の実態である。そこで、「認定産業医」資格取得の講習単位に「産業精神保健の事例検討」を2単位制度の必須項目とするなど、早急な制度改革が必要となっているように感じる。
「従業員の教育をやった」、「管理監督者の教育をやった」それぞれが17% 程度で、41%の事業場では「事業主などが今のところ必要性を感じていないようだ」とのことで、メンタルヘルスに関する教育が全く行われていなかった。また、18%が産業医自身が「今のところ必要性を感じていない」、また、21% の産業医が「メンタルヘルスに関する教育はしたいが、具体的な方法が分からない」ということで全く手つかずの常態であることが判明した。
「意見を求められた」、「求められなかった」が半々であった。以前より、長期休職者の復職に意見を求める事業者が増えただけ産業医に対する期待が改善されたと理解したい。
「ある」が25%、「意見は述べたことがある」が40%、「ない」が36% であった。産業医は医学的なことについて、必要なことは、強制的か否かは別と して、キチンと事業者に述べ、職責を果たしていることがわかる。
半数が「困っていることはない」で、事業者や産業保健スタッフとの人間関係が理想的な状態を保たれていることが分った。しかし、現実の問題として、時間的余裕がない(29%)、従業員の産業保健に対する関心が低い(18%)や産業保健に関する知識や経験が不足している(18%)などの問題は抱えているようであった。
認定産業医資格を持っている医師の多くは内科医で40〜50歳代の男性医師であった。産業医学講習会が県内の2つの医科大学で定期的に行われていることもあり、多数の医師が「日本医師会認定産業医」資格を取得し、事業場の産業医として、また、「地域産業保健センター」を拠点に活動いるものと思われる。なお、県内医師は男性が多く、人間として柔軟な対応のできる年齢に達し、また、経済的にも社会的活動に参加することも可能となったこともあり、40〜50歳代男性医師の多くが「産業医活動」をして下さるようになったのであろうか。
栃木産業保健センターを「良く知っている」と「聞いたことがある」の医師を合わせると91%にものぼったにもかかわらず、「利用したことがない」医師が72%もいた。50時間の産業医講習会に出席して「日本医師会認定産業医」にはなったが、所属する医師会管内に「産業医活動を求める事業場がない」ので「産業医活動を行っていないので具体的な問題解決のため推進センターを利用したことがない」のが実状なのだろう。地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センターが「50人未満の小規模事業場の産業医共同専任事業」を展開するための補助金を支給しているので、活用して貰えるための努力が必要と考えられた。
「認定産業医」資格取得者の18%が医師会に入会していなかった。県内には産業医学講習会を開催している2医科大学があり、多くの大学職員は医師会会員になっていない医師が少なくない。しかし、県医師会が大らかに「認定産業医学講習会」修了者に「日本医師会認定産業医」となる書類手続きをとっているので、「医師会員でない認定産業医が少なくないという結果となったと考えられる。
「良く知っている」と「聞いたことがある」合わせて89%と極めて高かった。「地域産業保健センター活動をしていない医師の返答率が低いはず」なので返事をした医師は「地域産業保健センター」の名前は聞いているとも考えられるが、平成5年、地域産業保健センターが地域医師会の努力によって、10年間、活発に活動してこられた努力が地域産業保健センターの認知度を高めたものと考えたい。
地域産業保健センターは小規模事業場などに産業保健活動を供給する役割を担っているが、8地域センター何れも当該地域の「日本医師会認定産業医」が活発に活動している。今回の調査では認定産業医の半数が地域産業保健センターに登録しており、活発に活動している。しかし、?問題は「無料で産業保健サービスを提供する」というコーデイネーターの話がうますぎて小規模事業主が乗ってこないというのが現実で、?「産業医活動を希望する小規模事業場」を探し、?受け入れさせるまで話が進まないというのが実態である。
地域医師会が担当している地域産業保健センター活動の認知度はかなり高いので、今後、地域医師会で認定産業医の資質向上を図りながら?地域産業保健活動を活性化し、?登録医を増やし、また、?「小規模事業場の共同産業医選任事業」を普及して、地域内の小規模事業場の実質的な産業保健活動をこれまで以上に展開して下さるよう期待している。
61%が登録医療機関であり、これから登録記機関として登録したいが17%あるのに、22%が登録するつもりはないとのことであった。
栃木県内の?地域産業保健活動や?小規模事業場の支援事業はともに活発であるうえ、?こうしたアンケートに答えて下さった産業保健活動に関心の高い産業医でさえ「小規模事業場の産業保健支援促進事業」についての知識が欠けている方が少なくなかった(27%)という事実に大きな衝撃を受けた。?今後、医師に対しても、更新研修の折にでも、地道に、絶えず「小規模事業場の産業保健支援促進事業」PR活動を続けてゆかなければなるまい。